全身ハイパーサーミア治療の手順
1. 患者を、チャンバー型の治療機の台の上に仰向けに寝かせる。患者の胸部、腹部、鼠蹊部には体表温度を測定するために体温センサーを装着する。同じく深部の温度を測定するために食道、直腸、膀胱にも、さらには脳の温度を測定するために外耳にも体温センサーをすべて無痛で装着し、モニターにつなぐ。
2. 治療中の発汗に対する水分補給などのために、ブドウ糖液を点滴し、酸素吸入をする。また治療中は静脈麻酔によって患者を眠らせておく。これは、約3時間の治療中、多くのセンサーをつけてじっと寝ていなければならないストレスと、熱さを感じさせ、心臓に負担をかけないためだ。
3. 患者をチャンバーの中に入れ、周囲から遠赤外線を放射して体温を上げていく。60〜90分で直腸温が41〜42度に達する。
4. 患者をチャンバーから出し、特殊なカバーで覆い、全身を保温する。深部体温を41〜42度で1時間維持し、数時間休憩してもらう。
この方法で、治療は週に1回ずつ、4回で1クールとしている。10〜20%の患者に反応性の発熱や倦怠感などの副作用が認められるが、火傷などを生じることはないという。
対象は16〜80歳の、主に進行ガンの患者で、呼吸機能や心機能に問題がない人など、細かい適応基準がある。 ルーククリニックの竹内晃医師(医学博士)は本院のルカ病院にいたときから、これまでに約850人の患者を、この全身ハイパーサーミアで治療してきた。ほとんどが抗ガン剤も効かなくなった患者だ。
中には2年以内の生存率が17%といわれる尿管ガンにかかった75歳の女性もいた。すでに膀胱や腹部のリンパ節にまで転移していた。
それが1クールの治療が終わったところで、腫瘍マーカーも正常値に戻り、腹部リンパ節の転移も縮小していた。2クール目には腹部リンパ節の腫瘍はCTでは写 らなくなった。今ではすっかり健康を取り戻し、高齢にもかかわらず元気に働いている、完治例の一人だ。
全身ハイパーサーミアの治療で竹内医師が目指しているのは、ガン患者を完治させることにはちがいないが、増殖のスピードが早く、次々と転移していくガンはそれほど甘い病気ではない。
完治することよりも、まず延命を。それが竹内医師の考えだ。ガン細胞の増殖スピードを抑え、転移を止めれば、たとえ腫瘍が残っていても命を奪われることはない。
「全身ハイパーサーミアは、すべてのガンを完治する治療ではありません。しかし、ガンが進まない、つまり患者が死なないという効果 には絶大なものがあります。ガンを殺すのではなく、ガンに殺されないようにというのが全身ハイパーサーミアの治療法なのです」
● 全身ハイパーサーミアの特長
◆体内の温度を42度まで上げることで、全身のガンの進行を抑えることができる。
◆身体への負担が少ない。
◆副作用も少なく安全性が高い。
◆進行中、あるいは末期ガンにも有効。
◆完治より延命を重視。ガンを殺すのではなく、ガンに殺されないようにするのが全身ハイパーサーミアの考え方。