HRTはこわくない
女性ホルモン補充療法による治療効果の高さは、前段でも述べた通りだが、ホルモン薬を使うことに抵抗感をもつ人がいるのも事実なようだ。その辺について、野末医師はこう語る。
「クリニックに来院された方で、漢方治療が受けたくて外国からわざわざ帰って来たという人もいました。外国ではホルモン補充療法が常識的に行われているのに、それを拒否しているわけです。
これはピルを使いたくないっていう人が多いのと同じで、十分な説明がないために正しく理解していないのだと思います。そのせいでホルモンは何となく異物で、自分にとって使うと体に悪いとか、毒を使っている感覚を持ってしまうんですね」。
このように、一般に『ホルモン補充療法がこわい』といわれるのには、原因と考えられる事実も過去にあったという。
「女性ホルモン補充療法というのは、欧米では30年以上も前から実践されていて、当時は卵胞ホルモンだけを単独で用いてたんです。そうすると、子宮体ガンになる人が少し増えてしまって、これは大変というニュースの方が日本に伝わってきたのね。その印象が根強く残っている部分もあるのだと思います」。
子宮体ガンは、卵胞ホルモンが過剰な状態で発症することが解明され、閉経後数年間が非常になりやすいといわれる。卵胞ホルモンだけを補充するのは、これと同じ状態を作ることになり、子宮体ガンになる人が増えたのも、もっともな結果 だったという訳だ。その後の研究で卵胞ホルモンの過剰な作用を抑える黄体ホルモンを加える事で、子宮体ガンの発症を逆に減少させるというデータも出ている。ただ、乳ガンに関しては、専門家でも意見が分かれ、はっきりとした結論は出されてはいないが、
「乳ガンについては、長期使用の場合に若干増えるという報告がされていますが、あくまでも発症率であって、死亡率ではないことを念頭に置いてください。生存率という観点からみれば、療法を受けている人のほうが長生きです」
という、メリットは見逃せないところだろう。
卵胞ホルモンだけを用いる療法をERTと呼んでいたのに対し、黄体ホルモンもあわせ2種類の女性ホルモンを補充する療法はHRTと区別 されており、現在行われているのはHRTの方である。