豊富な栄養成分が慢性病に有効に作用
不老不死の秘薬として秦の始皇帝が愛飲したと言われる「プラセンタ」。
日本語に訳すと胎盤のこと。最近は「プラセンタエキス」なる言葉もよく耳にするようになり、 健康食品としても注目度を高めているが、実は医療の現場で使われ始めたのは意外に古い。
胎盤とは、妊娠中の母親のお腹の中にできるあの胎盤のことだ。
われわれ人間の命は、わずか1個の精子と卵子の出会いから始まる。卵管で受精した受精卵は子宮に着床し、その表面 から無数の絨毛が伸びてくる。やがて着床面の絨毛だけが成長し、それが子宮内壁と結合して胎盤が形成される。
胎盤は円盤状をしていて胎児の成長とともに大きくなり、妊娠末期には直径15〜20センチ、厚さ2〜3センチくらいになる。胎盤はへその緒によって胎児に繋がっているので、胎児は胎盤から栄養の補給を受けたり、老廃物の排泄をしながら、成長をしていく。
いわば胎盤は、1つの受精卵を1個の個体に育て上げる重要な働きをする臓器なのだ。受精したばかりの卵子はまさにミクロの存在。それが10カ月後には3000グラムの重さの命に育っていくわけだから、その成長スピードは驚くものがある。胎盤は、1人の人間の体で行われる生命維持機能をすべてそれだけで行っているのである。
そのため胎盤には、胎児を育て上げるのに必要な生理活性物質と栄養素が豊富に含まれている。胎盤から抽出されたプラセンタエキスに多くの薬効が認められるのはそのためだ。
よく哺乳動物の牛や馬などが、出産後、胎盤を食べてしまうのを見かける。あれは栄養豊富な胎盤を食べることで母親が速やかに体力を回復するのに役だっているという説があるが、動物たちはそうしたことを本能的に知っているのだろう。
人間もその有効性には気がついていて、古くは古代ギリシャのヒポクラテスの時代から民間薬として使われてきた。また、中国の漢方では古くから胎盤は不老の秘薬として認められており、かの秦の始皇帝は不老不死の妙薬として愛飲したと言われている。
明の時代に医師・李時珍という人によって編纂された、中国でもっとも伝統のある『本草綱目』には「紫河車」という名で紹介されており、胎盤の薬効が詳しく書かれている。のちに日本にも伝えられ、江戸時代に加賀藩の三大秘薬の一つだった「昆元丹」は、紫河車を配合したものと言われている。
近年になり、ヨーロッパなどで胎盤についての研究が進み、多くの科学者たちにより臨床治験が繰り返されてきた。その研究データにより医薬品としての有効性が認められ、ドイツやイタリア、スペインなどでは医療用として盛んに使われるようになったのである。
日本へは昭和初期に入ってきており、50年ほど前に医薬品として認可されている。
胎盤は出産後に後産して体外に出されるが、その胎盤から有効成分を抽出したものが「プラセンタエキス」だ。このプラセンタ成分を使った治療薬が医療現場で使われているのだが、エキスを配合した健康食品や化粧品なども、私たちのまわりで大活躍しているのである。