「津液」の流れをよくしてストレスに強い消化器にする
漢方薬は“ツボ”にはまりさえすれば、たちどころに病を治すすごいパワーを持っている。慢性的な消化器系疾患でもそれは同じだ。その“ツボ”を探り当てるのが漢方医の醍醐味なのだと土佐院長はいう。
「漢方では、『気(き)』と『血(けつ)』が、滞ることなくスムーズに体内を巡っている状態を健康、それらがうまく循環しなくなった状態を病気と捉えます」と土佐院長。
「気」は生きるエネルギー、あるいは活力と言い換えるとわかりやすいし、「血」は肉体をさす。「血の巡り」と考えるとイメージしやすいかもしれない。 気血が滞ったところに痛みが出たり、冷えたり熱をもったりして「病気」となるわけだが、その原因には、例えば暑い、寒い、じめじめしている、乾燥しているといった外からの刺激と、喜ぶ怒る悲しむといったいわゆる内的で精神的な刺激がある。
「喜怒哀楽というような感情の動きを、漢方では喜怒思憂悲恐驚の七つの情で表しますが、一生懸命考えるとか、深考えるとかといったことを「思」といいます。これが消化器に強く影響を与え、気や血の巡りを妨げると考えられているのです」
例えば過度の怒りは肝臓、憂いは肺、というようにそれぞれの感情に体内の臓器が対応している。そうして考えると、何かとストレスの多い現代においては、消化器を患う人が多いのは全く当然のことといえそうだ。
さて、消化器系の疾病には「水」の流れも重要なポイントになる。この場合の「水」は漢方でいうところの「津液」で、潤いや水分のこと。気血の流れと同じく、この「津液」の巡りも健康な体には欠かせない。
「消化器には消化活動のための『水』である消化液が10リットル以上も分泌されているといわれています。だから消化器には水が貯まりやすい。水が滞ると、そこが冷えたり、やがて毒になって熱を持ったりする。そうして「病気」の状態になるのです」
病の在処を探し“証”を導く
土佐院長は、患者さんがもつ全体の雰囲気をつかんで、どこで気血水の流れが滞っているのか見当をつける。そして、まずおなかに触ってみて脈をみる。腹部に水がたまっていたり、熱があったり、逆に冷えていたりすれば、触った手がそれを感じとるし、脈を診ると、拍動が力強かったり弱々しかったり、乱れていたりするのがわかるのだ。そして、どこが一番痛いのか、苦しいのか、辛いのか、患者の訴えを聞く。
それによって導き出されるのが「証(しょう)」である。
「『証』というのは、実用的に考えると病態の診断名みたいなものですね。例えば、風邪をひくとよく飲まれるのが葛根湯ですが、葛根湯が効くのは風邪だけではありません。また、体質や風邪のタイプによっては葛根湯では治らないこともあります。ですから、『風邪には葛根湯が効く』のではなく、葛根湯で治る病気があって、それは葛根湯『証』という病態名になるのです」