漢方では「証」が
薬の処方のよりどころ
おなかに「水」が貯まっているなら、気の流れをよくして水が滞らないようにする利水作用のある漢方薬「六君子湯(りっくんしとう)」がいいし、熱を持っているようなら「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」の熱を冷ます作用があっている。しかしこれも、同じ症状ならどの人にも同じ漢方薬が効く、というわけではない。
例えば、生来の体質として熱を持った人や、逆に冷えの人もいる。それだけでも使う漢方薬はまったく違ってくる。この違いを見抜くのが漢方医の力量 である。
「その人の『証』にぴったりはまる漢方薬を処方できれば、どんな症状でも必ず治まります。はまってしまえば、何年も苦しんだ胃痛から1日で解放された、とか、一回薬を飲んだだけで胃がすっきりした、とかということも希ではありません。もちろん、基本的には長い患いを治すにはそれなりの時間が必要ではありますよ」
そして、「症状は変わっていきますから、同じ漢方薬を飲み続けるのがいいわけではありません。身体の状態の変化に応じて、それに合う薬を処方していくのも大切なことです。その判断をしていくのも医者の仕事で、決して患者さんが自分で勝手に判断することではありません」
快復したと勝手に判断するのは禁物
症状が収まると勝手に薬をやめてしまう人がよくいる。しかし、そういうやめ方をすると再発しやすい。ある段階までは確かに快復しているが、完治ではない。薬を飲み続けることに不安を持つ人は多いが、判断は医者にゆだねるべきだ。
「漢方薬の副作用で甚大な病気になることはまずありませんが、効果がない薬を長期に服用しても意味がありません。ですから、快復の兆しを見極めることは大切ですが、早計な判断はよくない。快復まで時間のかかる薬もありますから、その辺はやはり医者と相談しなければなりませんね」
漢方薬では症状を和らげられない病気はない、と土佐院長はいう。痛みを和らげたり、倦怠感を取り除いて生きるパワーを高めたりすることはできる。だからといってそれが病気を治すこととは結びつかない。
「腫瘍や感染性の病気は漢方で治すのは難しいです。しかし、その激しい症状が終わった後が漢方の出番です。私は一般 の診療と漢方の看板を掲げていますから、漢方の考え方からアプローチしますが、肝心なのは患者さんの苦痛を和らげたり、おさめたりすることです。そこには漢方かそうじゃないか、ということにはあまり意味がないと思いますよ」
心を真っ白にして患者に対峙し、触れることで患者の訴えを手先に受けとめて病の在処を見つけ、正しい「証」を得る。土佐院長の漢方治療の原点である。