不快感の改善が漢方治療の目的
漢方には大きくなった腺腫を小さくする作用はほとんどない。漢方は尿を出にくくしている様々な要因を取り除き、尿を出しやすくし、回数を減らし、不快感を改善することを目的としているのだ。
前立腺肥大患者の約3割は50歳ころから症状が出始めており、老化の一症状と見なされている。通 常、老化とは五臓六腑のうちの腎臓の生理システムの衰えのことを指し、これを「腎虚」 と呼ぶ。
その「腎虚」に対しては八味地黄丸、牛車腎気丸、海馬補腎丸などの腎を補う漢方を投薬する。これらの漢方は、体全体の新陳代謝を高め、脳神経や末梢神経を甦らせ、排尿システムがうまく働くように作用するのだ。
また、年齢とともに足腰が弱ってくると骨盤内の筋肉も凝り、うっ滞を起こしやすくなり、腺腫が大きくなって前立腺周囲や組織内を圧迫して「お血」という循環障害や炎症が加わってくることがよくある。
この「お血」に効果のある漢方はが桂枝茯苓丸、桃核承気湯、大黄牡丹皮湯などだ。これらの漢方は、お血性炎症を取り除き尿道の腫脹を抑え、膀胱の出口の過敏な状態を改善して尿を出やすくする。
尿路感染を伴っている場合や炎症がみられる場合は、循環を改善し、頻尿も改善する清熱剤である猪苓湯、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯らの投薬が最適だ。
【第1期/刺激症状期】
腺腫が大きくなるにつれて、圧迫や炎症により膀胱の出口や前立腺部尿道が過敏になっている状態。排尿時の不快感、排尿困難、頻尿が自覚症状として現われる。
【第2期/残尿発生期】
尿が第1期より出にくくなり、出し切れなかった尿が残尿として膀胱内に蓄積される。そのため膀胱内に侵入した細菌が体外に排除されにくくなり、尿路感染を繰り返す。
【第3期/腎障害期】
残尿が多量となり、尿が出ない尿閉という状態を繰り返す。腎臓から送られてくる尿も膀胱内に入れず、行き場をなくして水腎症を引き起す。そのため、腎機能がしだいに低下し、尿毒症となる場合もある。