ホリスティックな歯科医療を実践
西洋医学と東洋医学を統合
私たちのまわりに歯科医院がたくさんある。ちょっと街角に立ってあたりを見まわして見よう。歯科医の看板が2つや3つ、簡単に目に飛び込んでくる。住宅地の中に看板を見ることも珍しくない。だが一方で、なかなか思うような治療をしてくれる歯科医院が見つからないという現実もある。ここでは西洋医学と東洋医学を統合させた包括的歯科医療を実践している歯科医院の治療法を紹介する。
人間を丸ごと診る医療を
「歯科と医科の大学教育システムは分かれていて、歯科は特殊な専門分野として存在しています。しかし、人間の身体の中で口だけが別の器官ということはないわけですから、医学全体の中で考えていかなくてはいけないと思います」
東京・渋谷と世田谷にオカムラ歯科医院を開業する院長の岡村興一歯科医師は言う。
「とくに歯科というのは感覚が鋭敏なところを治療します。耳や目などの感覚器官が集まっているところを特殊な機械で治療するわけですから、患者さんは緊張します。ましてや患者さんは口を開いていますから医師と会話をすることなどとてもできません。そういう意味ではハートフルな診療でなくてはいけないし、お互いに触れ合えるようなものでなくてはいけないと思います」
岡村先生は、歯科と医科が分かれていることに常々疑問を感じていた。身体の中で口だけが別な器官ではないのだから身体全体で診なくてはいけない。もっと言うと、人間を丸ごと診なくてはいけないのではないかと。しかも西洋医学は合理的でシステマティックな医療であり、とかく無機質になりがちである。それを少しでも和らげるためには西洋医学の中に東洋医学的なもの考え方と東洋医学が入つてきたほうがいいのではないか。
岡村先生は二十数年前から強くそう思うようになった.それは東洋的な生命観とか東洋的な身体観と繋がっているものなのだという。
そんなことを考えているとき、たまたま上海で鍼麻酔による甲状腺の手術が行われたことを耳にした。
「われわれの受けた教育からはそんなことはあり得ないことですが、実際にそういうことがあったわけです。とても神秘的なものを感じました。そこで、痛みをコントロールするために鍼麻酔を歯科治療に応用してやってみようというのが、臨床導入のきっかけの一つです」
以来、鍼灸治療と漢方薬治療を加え、西洋医学と東洋医学を統合した包括医療を実践している。
ただ、歯科医院で鍼治療をしていると奇をてらったイメージでとらえられがちだが、「1983年には日本歯科東洋医学会も設立され、学術的な研究も盛んだ」という。
岡村先生は、その会長をこの4月から努めている。