頭・首・肩の3点で支える枕が理想
では、"首にやさしい枕"とは、いったいどのような枕なのか。
約10年前、奥山院長は、「後頭部を安定させ、肩で支えて、首に負担をかけない形の枕が一番いいのでは」という仮説を立てた。そして、この頭と首と肩の三点で支える枕、名づけて三点支持理論を実証するため、日本睡眠研究所と共同で「ピローフィッター」という器械を開発。
120人の患者の協力を得て、首の形や枕の素材、硬さに関係なく、後頭部と首と肩にそれぞれ「2.5対1対1.2」の比率で荷重圧が加わった時、人は寝心地がいいと感じることがわかったという。
この結果をもとに、奥山院長は寝具メーカーと共同で、首にやさしい枕を試作。自分で理想的な形状が作れる「だぶだぶ枕」を皮切りに、画期的な枕を次々と世に送り出した。
さつきが丘医院では、枕の相談で訪れる患者の頚部をレントゲン写真に撮り、20種類ほどの枕の中から、その人に最も適した枕選びのアドバイスを行っている。場合によっては3週間ほど枕の貸し出しもする。
首にやさしい、自分に合った枕を使ってみて、長年悩まされていた激しい肩の痛みがひと晩でやわらいだり、初めて熟眠感が得られたという患者が少なくないという。レンタル期間が終わっても、「もう手放せない」となかなか枕を返してくれない患者がいるのが奥山院長の悩みだ。
40歳を過ぎたら枕の点検を
奥山院長が患者を対象に行ったアンケート調査によると、枕を購入する時の規準は、「手で押してみて感触がよいもの」と答える人が約60%にのぼるという。
「しかし、枕は身につけるものと同じ。デザインや手触りが気に入った洋服でも、試着してみると合わないことがよくあります。枕も同じで、実際に頭と首を当てて寝てみないと、自分に合うかどうかはわからないのです」
人間の体は順応性があるため、身体に合わない枕を使った場合、最初は違和感を感じても、1週間もすれば慣れてしまい、それほど気にならなくなってしまう。しかし、これでは、首は確実に壊れてしまう、と奥山院長は警告する。
「枕を自分の身体に合わせるという考え方は間違い。自分の首に枕を合わせることが肝心です」
また一般に、首の老化が深刻になってくるのは40歳前後から。そこで、「40代になったら3年に1度は自分の枕を点検してみたほうがいい」と奥山院長はアドバイスする。
さらに、枕には寿命があり、素材にもよるが、ソバガラの枕の場合はだいたい5年が目安となるという。いかに馴染んだ枕でも、年齢や年月とともに、身体に合わなくなってくるものらしい。不眠で悩んでいる人は、「自分に合った枕選びのポイント」を参考に、ぜひ一度枕を見直してみてはどうだろう。